猫ひげ1000本

ふと自分に聞いてみたくなる1000の質問

おかしなことを言うようになった友人

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私には長らく友人関係にあった人がいました。

十年以上もの間、彼女と私は付かず離れずのいい友人関係を維持していました。

彼女のことを尊敬していたし、彼女に感謝していたし、彼女のことが好きだった。

だから、たまに会って話をする時に、彼女が私の興味のない話や自慢話を延々と続けても、それが大きな不満要素として認識されることはありませんでした。

彼女はトークにおいてそうした一方的な面があったけれど、それを上回る楽しい話をいくつも私にしてくれました。

 

長い間それでよかった。

なぜなら先にも言ったように、単純に彼女のことが好きだったから。

また、話が私の悩みなどに及んだ時は、彼女はそれにうまく寄り添って見せることができたから。

「見せる」と書いたのは、彼女が私の苦しみを理解できる要素を何一つ持っていなかったからです。そして彼女の私への寄り添いが、共感でないことを分かっていたからです。けれど、少なくとも彼女は私の苦しみを理解しているふりを完璧にして見せた、だからそれでいいと思っていました。

そして誤解なきよう付け加えますが、彼女が私のことを大切に思ってくれていると信じていたので、それさえあれば充分だったのです。

加えてこれは非常に重要な要素になりますが、私の踏み込まれたくない領域、私の大事にしている価値観、この二つは決して侵さない賢さと感度の良さが、彼女にはありました。

 

ですが、ある時から急に、彼女がラインを超えてズカズカと入ってくるようになりました。無理矢理アドバイスをしようとしたり、無闇に私を否定するようになったのです。そしてそれはある種の攻撃的な響きを持っていました。

 

嫌とか不快というより、残念でした。

それと同時に驚きました。

どうしちゃったの?! って。

 

時期を同じくして彼女は、

「幽界がどうだ霊界がどうだ。魂が傷ついている。あの世に行ってから苦しむ… …」

こういったことを延々と熱を込めて話すようになりました。

「サユリの魂は傷ついてるから、このままあの世に行ったら苦しむよ!」

とまくし立てる彼女に、

「じゃぁどうしたらいいの?」

と少々うんざりしながら私が言うと、

「サユリはまだそれを聞く用意ができてないから話せない」

と彼女。

 

ウザッ!! と思いました。

 

それからは、ラインを超えて踏み込まれる度に、ピピッと笛を吹いて彼女に警告を与えるようになりました。

幽界霊界話については、「そういう話には興味がない」と伝えました。

すると彼女は、更に勢いを増して不安を煽るような文言を並べたかと思うと、同時に、自己弁護や言い訳を始めました。

 

彼女への気持ちが、すぅっと冷めていくのが分かりました。

いったん気持ちが冷めてしまったら、もうどうにもなりません。

去年の夏、私は彼女からの連絡に応えることをやめました。

 

長年の友人を失ったことは、やはりこたえました。

悲しくもあったし、腹立たしくもあって、

 

全ては幽界霊界のせいだ!死んだ後のことなんて知るかよ!

 

と、彼女に言えなかったセリフを大声で叫んで、幽界だか霊界だか、現世だか死後の世界だか、もはやどこにいるのかもわからない彼女にさよならしました。

 

失った人のことは忘れて、今いる人を大切にしよう。

そう気をとりなおした時、真っ先に夫の顔が目に浮かびました。

 

でも、まてよ… …

 

下手をしたら、夫から幽界霊界に追放されてしまうかもしれない。

 

夫は気の優しい人で、大概のことは私に合わせてくれるので、それをいいことに私はいつもワガママの限りを尽くし、暴君の所業で、

「月を取ってきて。暑いから太陽を消して。お風呂に入る時間がもったいないから一瞬で体を洗えるカプセルを発明して」

と無理難題をふっかけていることに気付きました。

そういう私を見ては、母がたしなめるように発する「あなた、いつか彼から離婚を突きつけられるわよ」という声が頭の中でこだましました。

 

客観的に見てみると、いつ夫から三行半を突きつけられ、幽界霊界に追放されてもおかしくない状況です。

 

そんなわけで、今日から夫への行動の改善を試みようと思います。

まずは、「まだ最後まで観てないから何も言わないで」という夫に、映画のラストのネタバレをする意地悪をして喜ぶのをやめようと思います。

 

 

ふと自分に聞いてみたくなる1000の質問 #30

何故あなたはその人と友人でいるのですか?