猫ひげ1000本

ふと自分に聞いてみたくなる1000の質問

学ばない夫婦

ダイニングでパソコンをカタカタしていると、台所から夫が声をかけてきた。

 

思考を中断されたくなかったので、キーボードの手を止めずに、

書いている内容に集中を向けたまま、目で「今は話しかけないで」と訴えた。

 

ところが夫。「まだ背中、痛いの?」

 

苛立ちを含ませた眉間をこわばらせて、夫に「黙れ」と合図する。

 

それでも夫。「薬は飲んだ?」

 

 

 

昨夜の私は、なんだかいい気分だった。

 

アマゾンから届いた、洗い流さないトリートメント。

 

オレンジのつぶつぶが入っていて、とてもいい香りで、

それを髪に塗って櫛でとかしていたら、

なんだかとても女子っぽい気分になった。

 

女子っぽい気分ついでに、ちょっと女子っぽいことでもしてみようと、

YouTubeのヨガ動画を検索。

 

“体の硬さ、割り箸のごとし” の私は、普段ヨガになんて見向きもしないのに、

オレンジのつぶつぶで、気分が弾けてヨガ初体験!

 

マットに体を伏せて、右の脇の下から左の腕を通して、上半身を捻る。

 

「空に浮かぶ月を見上げるイメージで」というインストラクターの声に従い、

目線を更に上に引き上げようとした瞬間、背中に痛みが走った。

 

やはり、割り箸をひねろうとしたことに

無理があった。。。

 

 

キーボードの手を止めて、夫に向き直って言った。

 

「もの書いてるから話しかけないで」

 

「心配して聞いてるのになんだよ」

 

「前から言ってるよね。私がもの書いてる時は話しかけないでって」

 

「ちょっと聞いただけじゃないか」

 

「私、最初から話しかけないでってサイン出してたよね。なんで気づかないの?」

 

「気づいてたよ。すごい目で睨んできたから」

 

「気づいてて、なんでしつこく話しかけるの?」

 

「こっちは心配して聞いたんだよ。心配するなってこと?」

 

「そういう感情論を話してるんじゃない。タイミングの話をしてるの。

私がものを書いてる時は話しかけないでって前から伝えてあるでしょ。

今回もそのサインを出した。にもかかわらず、それを無視するのは無神経よ。

心配しているという善意を振りかざして自分の無神経さを肯定しないで」

 

「あぁもうわかったよ」

夫は心底面倒臭そうな声で答えると、私に背を向けるようにソファに体を沈めた。

 

 

私はまたパソコンに向き直った。

 

続けようにも、中断したせいで何を書いていたのかわからなくなってしまった。

 

   イライライラ

              イライライラ

    イライライラ

 

椅子から立ち上がり、ソファにいる夫の横に仁王立ちして言った。

 

「もう二度としないでよね!」

 

うんざりした顔で私を見上げて、夫が言う。

 

「今、プリン食べてるんだよ」

 

「だから?」

 

「俺が好物を食べてる時に、わざわざ横にやって来てそんなふうに怒鳴るなよ。

いつも言ってるでしょ。俺がリラックスして何かを楽しんでいる時に、

奇襲攻撃のようにやって来ては、小言を並べて、俺の楽しみを台無しにするなって」

 

イライライライラ

 

「タイミング考えろよ」

 

はぁ〜?!

 

 

ふと自分に聞いてみたくなる1000の質問 #1

自分がやられて嫌なことを、ついつい他人にやっていませんか?

 

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